Cafe 568 : 五郎八が思ったこと、感じたことを綴る 地熱住宅・五郎八の家
サヨリがきびなごに見えた


明石に人工島の江井ヶ島というところがある。
季節は肌寒い時期であった。

大手ゼネコンの下請け工事を担当していた私は、防寒作業服で身を守りながら現場の管理監督を行っていた。
昼の休憩時間に波止場まで散歩に行ったら、数名の釣り客が波止場から竿をたらして魚を釣っていたのである。
私の田舎では、釣りはもっぱら川でやっていたので、海での釣りには非常に興味があった。
どのような仕掛けで、どのような餌で、どのような魚がつれるのか...。

道糸の先端に直径3cm、長さ6cmくらいの籠がつけてあり、この中に餌の沖アミを詰め込む。
その道糸の上部に針を5〜8本をつけた竿を上下に動かすと、
籠の中の沖アミが少しずつ海中へ散乱して、これがまき餌の効果を起こし、魚をおびき寄せるとてもシンプルな釣りだ。

一人の男性釣り人の竿を見学していたら、キラキラと輝きながら3匹ほどが
海中から身を躍らせながら、勢い良く上がってきたではないか。
とても感動的なシーンであった。

細身の魚で全長8センチ程度あり、下あごのほうが長い形をしていた。
一見すると「きびなご」に似ており、私の大好物の魚でもあるので、思わず美味しそうと思い、
やおら釣り人に近づき、釣れたばかりのきびなごに似た魚を針から外し、そのまま口にしたのだった。

きびなごのイメージで食べたのだが、意に反して骨が硬く、鱗も上あごにくっつくし、味もまったく異なるものであった。

私がそのような感傷に浸りながら食べていると、その釣り客が突然竿をたたみこんで帰ってしまったのである。
その釣り客は、「今度は自分が食べられる」と思い込み、恐れをなして退散して行ったのではないか。

当時の私の風貌は、口髭と顎鬚は長く伸ばし、髪の毛は後ろでくくり、
さらに防寒作業服に身を包み足元は、黒の長靴を履いていたので、
誰が見てもお腹を空かした不振な浮浪者しか見えなかったのである。
そのときの釣り客に文面を借りて驚かしたことを謝りたい。


2009年3月4日 フロリダにて

エコロジー建築家 矢上五郎八
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地熱住宅・五郎八の家