Cafe 568 : 五郎八が思ったこと、感じたことを綴る 地熱住宅・五郎八の家



1997年に京都議定書で、地球温暖化防止に向けてCO2削減の会議が開かれたことは、
みなさんご承知のことと思いますが、
それでは具体的に何をどうすればいいのか、これがよくわからないのです。

CO2の発生源は大きく分けて、車と建築物ですが、
建築物からの発生が車の約2倍といわれています。

そこで建築家として、「建築物が消費するエネルギーを削除すること」がCO2の発生を減らすことになるので、
地中にある地熱・温熱に注目し、これを建物に利用することを研究しました。
また、室内化学物質を排除した木造建築物を「五郎八の家」として世に発表しました。

さて、この地熱・温熱の利用を見つける前に、
日本の木造建築は「なんで冬、こんなに寒いの?」という素朴な疑問を持っていました。
私は建築の世界に入り、今年で36年になりますが、
14年間は中堅ゼネコンで公共工事や民間企業の工場・事務所・マンションなどの
鉄筋コンクリート造や鉄骨造などの現場管理に従事していました。

30歳で独立しましたが、そういう仕事があるわけでもなく、
建築確認申請の図面や施工図を作成する日々が続きました。
あるとき、木造住宅の依頼があり、はじめて木造建築を手掛けました。

その頃の一般的な基礎の工法は、土台の下だけに基礎をつくる「布基礎工法」を取っていました。
さらに床下は、ほとんどが土のままの状態で施工するので、床下の湿度が高まり、
この湿度を早く外部に逃がす方法として、
外周に20cm×40cm程度の「風通し」の穴を数ヶ所設けていたのです。

このように、非常に複雑な工法で木造建築の基礎は長い間行われてきましたが、
鉄筋コンクリート造・鉄筋造を手掛けていた私は、いつも疑問を持ちながら仕事をしていました。

つまり、鉄筋コンクリート造や鉄筋造の床には、床下を設けないのが一般的だったので、
このやり方を木造の基礎の工法に取り入れようと思い、
床下を設けない基礎、つまり「ベタ基礎工法」を採用しました。

その工法は、1988年から取り入れ、今年で16年目になります。
1995年1月17日、淡路阪神大震災が起こる10年も前です。

最初の現場で、今でも忘れられないことがありました。
完成した基礎工事を見た近所の方が「こんなすごい基礎をつくって、どんな建物ができるの」と失笑気味に聞かれました。
工事に着工する前に施主の方と近所挨拶を行ったので、木造建築住宅ができることはその方もご存じでしたが、
少しのやっかみと少しの経験からの言葉だと思いました。

そこで私は「地震がきて家が倒れても基礎だけは残るようにしています」と、
冗談とも取れるような返事をして、その場を切り抜けました。

大震災以後、関西ではほとんどの木造住宅の基礎は、ベタ基礎工法が採用されています。
こんな工法を数年間取り入れて行っていました。

あるとき鉄筋コンクリートの1階の床下には、空間を設けていないことを思い出しました。
「そうだ!床下も室内と考えて、その上に床をつくれば、冬に床が冷えないのではないか」
床下換気孔を設けなければ、冬に外部の冷気が床下に入り込まないので、
各部屋が冷え込まないのではないかと考えたのです。

この工法を1994年より採用し、いろいろ改良を行い、現在の地熱・地温を利用した基礎が完成しました。
原理的には、エネルギーを持った異質の物質は、
密着すると質量の大きな物質のエネルギーに同化する特性があるので、これを利用しました。

先人は理論的ではなく、経験的に地熱・地温を利用していました。
そのひとつに農作物を厳寒の冬を越冬させる方法があります。
それはジャガイモやサツマイモなどの根菜類が凍害を受けない保存方法で、
まず地中に深さ90cm、直径60cm程度の穴を掘り、
その中に根菜類入れて上から藁を敷き、土をかけて越冬するのです。
この方法は、全国のほとんとの農家で行われていました。

もうひとつの方法は、土蔵造の蔵です。
私の田舎は、球磨焼酎の造り酒屋がたくさんあり、湿度・温度に大きく左右される酒造りには、
土蔵造りの建物が温度・湿度を安定させるのに一番適していました。

床は土間のまま、壁・屋根は30cm程度に土で塗り固め、
地方によっては屋根の上に空間を設けて、その上に屋根を施します。
つまり、現在よく行われている施工方法で、屋根通気工法なのです。

古い建築物を研究すればするほど、先人たちのすごさに改めて感動しました。
この土の厚み約30cmが大きなポイントで、
水道の塩ビ給水配管を地表面から約30cmの深さに埋設すると、
保温管なしでも真冬ほとんど凍結しません。
これらの方法は、すべて地熱・地温を体験的に利用していたのです。

夏、鍾乳洞や坑道に入って、涼しく感じたことはありませんか?
私も夏に銀山の廃坑へ行きましたが、
入口から約450m入ったところが少し広くなっていて、地下水が懇々と湧いています。
ここの温度が摂氏約13℃であり、地熱・地温で年中通じて温度差があまり変化せず一定です。
地表面から深さ約5m〜7cmで摂氏13℃〜15℃と、年中安定しているので、
この安定した地熱・地温を利用したのが「五郎八の家」なのです。

地熱・地温が持っている摂氏13℃〜15℃が地下水と同化したものが井戸水です。
昭和40年くらいまでは、ほとんどの家庭の生活水が井戸水であったので、
今の若い人を除き、大多数の方が「井戸水は夏冷たく、冬暖かい」ということは、ご存知だと思います。
井戸水の温度が夏と冬で変わるのではなく、外気温の変化により、そう感じるのです。
つまり、井戸水は年間を通じて摂氏13℃〜摂氏15℃と一定していますが、
例えば、外気温が夏摂氏30度だったら冷たく感じ、冬摂氏3℃であれば暖かく感じるのです。

このように、ほとんど変化のない地熱・地温を利用しながら、建築物の基礎・外壁・屋根を構築していきます。
外壁は外断熱を行い、断熱をしない柱の厚みの壁空間に地熱・地温を導きます。
さらに外壁・屋根から夏の暑い輻射熱が入り込まないように、
断熱材外側に熱くなった空気を逃がす道をつくるのですが、
このとき重要なのは、この熱い空気が内部に入らないように断熱の施工を緻密に行う必要があります。
ここが最大のポイントで、これが完璧にできなければ、夏は暑く、冬は寒い住宅になってしまいます。

では、なぜ外壁・屋根から輻射熱が入らなければ、夏でもクーラーなしの生活ができるのか、
ここで実例を挙げながら説明しましょう。

2005年5月に入居された兵庫県姫路市のIさん。
木造建築の在来工法で、一部ロフトを設けた2階建のごく一般の専用住宅です。

敷地面積 211.65u (64.02坪)
延べ面積 146.22u (44.23坪)
建築面積 84.81u (25.65坪)
 
  合計面積 比率
窓(出入口を含む) 43.86u 11.57%
床・壁・屋根(1階) 379u 88.43%

実に「床・壁・屋根」の面積が「窓」の面積の8.6倍です。
大雑把に見て、1:9 ですが、この数字を見て何か感じませんか?
そうです、「床・壁・屋根」からの夏の熱・冬の冷気の侵入を防げたらいいと思いませんか?
この考え方が地熱・地温を利用した「五郎八の家」の重要な部分です。
一年中安定している地熱・地温の特性を使い、熱エネルギーの特性を利用し、
夏は涼しく、冬は暖かい家がここに完成しました。
これが「五郎八の家」です。

今までに兵庫県内に約40棟の「五郎八の家」が完成入居されていますので、
ご覧になりたい方、または入居者の方々に生活体験談を聞かれたい方は、
ご案内いたしますので、ご連絡ください。


エコロジー建築家 矢上五郎八

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