Cafe 568 : 五郎八が思ったこと、感じたことを綴る 地熱住宅・五郎八の家



吉田兼好が「夏を旨とすべし」と言ったように、日本家屋は縄文・弥生時代より今日まで、
夏をしのぎやすく過ごすように工夫し、建てられてきた。
それには、ふたつの大きな理由がある。

第一は、日本の夏は高温多湿であることから、建具を多用することで開放型にし、室内の熱を逃がす工夫をしたこと。
第二は、湿度が高いので床を高く上げ、湿気から家屋を守るつくりにしたこと。

このふたつの理由から、夏の反対側にある冬が非常に寒くしのぎにくい建物になってしまったのである。

木材は、湿度が60%〜90%の間で木材腐朽菌(ふきゅうきん)が多く発生するが、85%でピークに達する。
この木材腐朽菌から家屋を守るため、日本の住宅は床を高く上げ、壁を少なく開放型にする工法で建てられてきた。

このような工法が今日まで続いたため、冬の暖房器具がいろいろ考えられてきた。
いろり、火鉢、湯たんぽ、あんか、石油ストーブ、電気カーペット、電気毛布、空調暖房機などなど。
これらの暖房器具の使用により、室内の温度差が発生してしまうのである。

これから日本が高齢化社会に向かい、この室内温度差が原因で起こる「脳血管障害」、「心血管障害」が問題になってくる。
年間の交通事故死者が約9000人前後であるのに対して、
室内における脳血管障害で亡くなる方が年間約1万3000人にものぼる。

高齢になると、血管が硬くなるので、急激な温度変化に対応できにくくなる。
つまり、冬に暖房している居間から廊下、便所、洗面所、浴室などに移動する際にこれが起こるのである。
特に洗面所、浴室など、寒いところで衣類を脱ぎ、さらに熱い湯船に体を浸ける行為をとるのだが、これが問題なのである。

血管は、暖かいところから寒いところへ移動すると硬直し、
さらに暖かいところへ移動すると、硬くなった血管へ大きな負担がかかるため、それが破れてしまうことになる。
これが脳血管障害、すなわち脳卒中なのである。

死亡に至らなくても運動機能障害になる方が数十倍になるであろうことは予測がつくが、
さらに問題なのは、運動機能障害の方を介護する家族である。
近年、日本が核家族になって久しいが、介護問題が非常に大きな負担になるのである。

このような問題を少しでも解決できないかと思い考案したのが、通常行われている基礎の工法をやめ、
あまり認識されていない地熱エネルギーを床下へ導入した工法であった。
それは私が建築の世界に入った頃、主に鉄筋コンクリート造の物件を担当していた実務体験から考え出したものである。

みなさんも日常的に体験があると思うが、たとえば病院、学校、銀行、百貨店などの建物に入っていくと、
いつの間にか部屋の中に入っていないだろうか?
つまり、この体験が木造建築の常識的な基礎の工法を変え、「床下も室内の一部である」という考え方で考案したのが
『五郎八の家』の基礎の工法である。

それは床下換気孔を設けず密閉型にし、冬季の冷気が入り込まないよう、室内の一部にしたものである。
もちろん、床下に地中の湿度が上がらないように対処してあるのはいうまでもない。

温度の特性として、冷たい空気は温まると上昇する。
室内空気が上昇すると、外気の冷気が床下換気孔から床下へもぐり込むので床が冷える。
床が冷えるので、ますます暖房する。
すると、ますます外気の冷気が床下へ流れ込む。
この繰り返しによって、室内の床が冷え込んでしまうのである。

そこで私が考案した基礎で施工すると、この問題が一挙に解決するので、冬に床が冷え込まない。
だから、どの部屋も温度差があまり発生せず、乳幼児から高齢者に至るまで、やさしい住宅が可能になる。
「脳血管障害」、「心血管障害」が少しでも少なくなることを願っている。


2001年1月15日

エコロジー建築家 矢上五郎八
新しいコラムへ 古いコラムへ