Cafe 568 : 五郎八が思ったこと、感じたことを綴る 地熱住宅・五郎八の家



ヨーロッパの絵本に『ハトとネズミの物語』というものがある。
その中でハトはハトの世界、ネズミはネズミの世界で暮らしている。
あるときに、人間によって一羽のハトが捕らえられ、鳥かごに入れられ倉庫の中で飼われていた。
その倉庫の中で暮らしているネズミは、捕らえられたハトと友達になれた。

あるとき、ネズミが友達のハトにこう尋ねた。
「ハト君、外の世界はどのようなところだ」
ハトは、「ネズミ君、外の世界は森や小川があり花畑もあるよ」と教え、
さらにこう付け加えた。
「しかも僕は、空を飛ぶことができるんだよ」

それを聞いたネズミは、さらに興味を持ちハトに次の質問をした。

「へ〜。ぼくも外の世界を見てみたいな〜。
しかも空を飛ぶというのは、どのようなことなの?教えて欲しい」

ハトは、「それでは空を飛ぶということを教えてあげるから、
ひとつだけ僕のゆうことを聞いてくれるかい」と、条件を出した。

するとネズミは、「何でも聞くから、空を飛ぶことが知りたい」というので、
そこでハトは、「空を飛ぶことを教えるので、この扉を開けてくれるかい」とお願いした。

それを聞いたネズミは、その扉を開いた。

するとハトは、その開かれた扉から空に舞った。
それを見ていたネズミは、その瞬間に空を飛ぶということは、こうゆうことかと知るのだが、
しかし、それと同時にネズミは、ハトという「友達」をなくしてしまった。

つまり、なにかを得れば、同時になにかを失ってしまうのである。
また反対に何かを失えば、同時に何かを得ているのであることも忘れてはいけない。

世の中はプラスがあれば常にマイナスがある。
またマイナスがあれば、同時にプラスも起こっていることを忘れてはいけないのである。

特に自分にとって身近な親族の死は、亡くなった方が全身全霊を失って「生きる」ということを
どのような意味なのかを教えている瞬間である。

「陰」があれば同時に「陽」があり、現世において目に見えるのは、すべてが不条理の世界であるが、
この現世の不条理こそが真の条理を保っている。


エコロジー建築家 矢上五郎八
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